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タイトル 本文 寄稿者 掲載日
母のひとこと  私は愛媛県の公立の進学校に通った。入学前に出された宿題はしていかなかった。入学してからやればいいと思っていたから。ところが、授業はその次のページから始まり、私はそれ以来授業にはついていけなくなった。部活動に打ち込んで大学入試には目を向けまいとしたが、その日は着実に近づいてくる。いつか奇跡が起ってグーンと成績が伸びるようなことも夢見てはみたが、そんなことが起るわけもない。ある日、植物図鑑の絵をハガキに写しとっている時に、こんなふうに絵を描きながら一生過ごせたらいいのにと思った。その瞬間、ひらめいてしまった。「・・・東大がダメなら芸大かな」と。こんな単純な発想で美術方面に進むことを決めた。現役のときは東京芸大一本の記念受験。箸にも棒にもかからないというやつ。東京に出てきて通った予備校は、受験という言葉からはほど遠いところだった。予備校生の多くは歌舞伎町のイルミネーションへと消えていくのかすぐに来なくなる。残りのみんなもタバコは吸うは、酒も飲む。毎日がお祭り騒ぎの雰囲気で、そこにどっぷり浸り、また1次試験敗退。2浪目の1学期も友達から誘われて毎日パチンコ屋に通っていた。

  高校を卒業して東京に出る時、母はひとこと「信じとるよ」と言った。帰省しても、とくに何も言われることもなかったが、出発の時にはまたひとこと。同じ言葉だった。
高校時代、もう期待などしていなかったのかどうか、まったくうだつの上がらない息子に対していっさい何も言わなかった。親がどう思っているかなど、当時の自分には考える余裕もなかったと思う。しかし、東京に出るときの「信じとるよ」というたったひとことには、母の様々な思いが凝縮されていたのだろう。一線を越えそうになった時には、なぜかこの言葉がとどまらせてくれた。

  2浪目の秋頃だったか。私は変わったと思う。こんな環境の中でも芸大に合格する人が結構いる。それはどうしてなんだろうということを考え始めたから。絶対に入るぞという人は、確かにみんなと遊んでいても、ある時は100%集中している。この時、他人に流されず自分のことは自分で責任を持たないといけないということを、やっと受け入れることができたのかもしれない。そして、何が自分には必要なのかを考えてみた。先生のアドバイスはどういう観点からの助言なのかを理解して、自分で決めるべきだということ。長い時間だらだらやっていてもしょうがないこと。焦っても何も結果につながらない。一つひとつ一段目から積み上げていくのが一番の早道であること。これらを、実践することにした。自分で自分のプログラムを作って実行することで、充実感を味わえる毎日に変わった。

  今にして思えば、私は見守られるということで成長させてもらったような気がする。その後、私はヨーロッパのある学校で教員になった。最初の授業は学級崩壊などというものではないくらいひどい状態だった。ほんとにダメな教員だった。その時のボスも何も言わなかった。ただ、「信じているぞ」という無言のメッセージだけ送り続けてくれた。今の自分があるのは、親や上司のこの言葉のお陰だと思っている。

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